もはや独自路線を確立したLML
ニューカマーStar Autmatic 125も見逃せない
ベスパには設定のない4stモデルをラインナップし、ここのところ俄然注目度を高めているLML。そしてついにATモデルまでラインナップに加えるなど、シリーズの充実度はもとより、その動向からは目を離せないほど!
どうしてベスパのP/PX系とそっくりのデザインなのかは今さら説明の必要もないだろうけれど、80年代テイストにあふれるルックスでジワジワと人気を集めるスターデラックス。
ほぼ同じエクステリアデザインのボディでありながら、2stと4stといった異なるタイプのパワーユニットを搭載し、走りの印象すらまったく別ものに仕上げているところは間違いなく大きな魅力となっている。
そんなシリーズの最新作、Star Autmatic 125がデビュー。そのモデル名が示すようにCVT方式によるオートマチックユニットを搭載したシリーズ初のATモデルで、特徴的なルックスはほぼそのまま。
ところでこの“スター”という新しいモデル名だが、じつはイタリアなど一部海外で使われているネーミング。なのでコアなファンにとっては待望のモデル名だといえそう。
さて、それでは実車について見ていくことにしよう。
ATモデルとして考えれば当たり前のことなのだが、左グリップのハンドチェンジ機構がないのはかなり違和感がある。このルックスだけにハンドチェンジ車というイメージが先行してしまうのだ。
逆になんらかの事情……たとえば「ギアチェンジってむずかしいんでしょ?」とか、「AT限定免許だからムリ!」といった、気になっているんだけど「乗ってみよう」というところまでいかなかった人たちにとって、この新型はとても魅力的に映ることだろう。
なにしろ"あこがれのレトロな雰囲気"でありながら、ギアチェンジのいらないオートマチックスクーターなのだから。
そんな、ある意味で“いいとこ取り”ともいえるStar Autmatic 125は、動力伝達をオートマチックとしているのでクラッチレバーが不要となり、そのために左レバーはリヤブレーキをコントロールするためのもの……つまり国産モデルなどに見られる通常のATモデルと変わらないものとなっている。
同時にフロアからはフットブレーキが取り払われ、左側グリップは可動しない。
始動はキックアームでも可能だが、セルで簡単に目覚めるので苦労することもない。アイドリング時のエグゾーストノートは125とは思えない重厚感があり、少しくぐもった印象ながらアクセルに対するツキも悪くない。
試乗車はサイドスタンドも装備しているが、これはオプション。なので通常通りセンタースタンドをかけた状態でエンジンスタートを試みた。
いざ走り出すためにセンタースタンドを外す。ここでちょっとした驚きに遭遇。LMLの既存モデルの場合、エンジン搭載位置がセンターからオフセットされているため右にフラつきやすい。それがStar Autmatic 125ではセンター寄りにエンジンがレイアウトされているため、取り回しでグラッと来るようなこともなく、安定感が格段に増しているのだ。
走り出しはアクセルを開けるのと同時くらいのイメージで前に出る。じつにリニアでタイムラグの感じられない味付けとなっている。
加速はとても滑らかで、なにより驚かされたのが力強い押し出し感。正直、125クラスとは思えないトルクフィールに面食らってしまうほど。
決して俊敏とまでは言えないが、それでもグイグイと車速を高めていくあたり、150ccかと錯覚してしまうほどのパワフルさが感じられる。
やや腰高な車体構成が生む軽快なハンドリングはこれまでのモデルとなんら変わることなく、クイックで軽快なハンドリングを楽しめる。
フロントディスク+リヤドラムの制動力は必要にして十分。
総じて走る、曲がる、止まるにストレスがない。なにより右手一つで気持ちよく加速してくれるイージーライドの実現は、このルックスと合わせてファン以外の注目も集めるに違いない。
ちなみに高速道路に上がれる排気量ではないし、一般道の制限速度を遵守する限り法定速度以上の性能を試すことは叶わないのだが、それでも加速の感触とアクセル開度の余剰からは3ケタに届きそうな力強さを実感。パフォーマンスも申し分ない出来映えだと感じられた。
そのメカニズムだが、CVT方式による無段変速システムというオートマチック機構を搭載。こう書くとフツウのATモデルと変わりないものだが、スターデラックス系フレームへの搭載で四苦八苦したことは容易に想像できる。
そもそも2stエンジンの搭載は本家ゆずり(言わずもがなのベスパということ)でムリのないパッケージであったわけだが、4stエンジン搭載時にはフレーム後半を敢えてモノコックのメンバーから外し、パイプチューブフレーム構造を取り入れたセミモノコックとしていた。
それほど4stエンジン化によるスペース確保が難しい課題だったということなのだが、今回はさらにオートマチックCVTユニット込みとなるため、より難しい課題をクリアするために駆動パートまで含めて相当コンパクトにまとめているところは脱帽である。
総じてクラスオーバーな走りのポテンシャルを持ち合わせ、質感やルックスは既存のスターデラックスを踏襲。時代のニーズにもマッチする4stエンジンに加え、多くのファンが熱望したオートマチック化もついに実現。
これらのトピックにより「ベスパとそっくり」といった括りとは別に、独自のステータス性で確実にファンを増やしそうな勢いをみせるLML。
そしてこの新しく古めかしいStar Autmatic 125だが、ファンはもちろん、免許の有無に関わらず多くの人々を魅了するに違いない。
スター、そしてスターデラックスの両シリーズとも今後ますます目が離せそうにないし、さらなる進化に期待したい!
【主要諸元】
Star Autmatic 125(32万4,000円)
◎全長×全幅×全高
1,760mm×695mm×ーーー
◎軸距
1,235mm
◎シート高
820mm
◎車両重量
112kg
◎乗車定員
2名
◎エンジン型式・種類
空冷4ストロークOHC・2バルブ単気筒
◎総排気量
125cm3(cc)
◎最高出力
6.8±0.25kW[9.2±0.3PS]
/8,000±200rpm
◎最大トルク
8.7Nm[0.88kgf-m]
/6,000rpm
◎始動方式
セルフ/キック併用式
◎燃料タンク容量
7.0L
◎タイヤサイズ(F/R)
3.50-10/3.50-10
◎ブレーキ形式(F/R)
油圧式ディスク/機械式リーディング・トレーリング
◎カラーバリエーション
ピュアホワイト、アーモンドグリーン、サンバーストオレンジ、パウダーブルー