Honda製ハイホイールという題材から

300ccユニットの素性を探る

 

Long Interview

高性能ハイホイールSH300i

 

インプレッション編

Buono編集部:写真・文
photo & text by Buono editing unit

 

 

スタイリッシュで走りも良く、欧州でのヒットモデルへと成長したSH300i。この人気絶頂のハイホイール車には100ps/L といったハイパワーユニットが搭載され、その走りも気になるところ。そこで数少ない国内でのオーナーさんにお願いし、購入の経緯から維持に関することまで 包み隠さずお聞きしたロングインタビューが実現。Buonoによるインプレッションまで含め、SHシリーズのフラッグシップを徹底紹介!

■かなりボリュームある構成となってしまったSH300i -Scoopy-のロングインタビューだが、ご本人は300をベストチョイスだと思っている反面、つぎにもし買い替えるとしたらSH125iに注目しているとのこと。これは「なかなか行った先でなにかするというのがあんまないんですよね。ツーリングが好きな人ってみれば行った先でなにか美味いものを食うとか、温泉に入るとかっていうのがあるじゃないですか。ボクの場合は道中が楽しみなので、行った先はどうでもいいんです。だから意外と写真も撮らず、行ってもコンビニのおにぎりでいいやって感じなんですよね……」というコメントから推測するに、スクーターに求めているものがシティコミューターとしての使い勝手や機能面なのだろう。ロングランを用途から外してしまうとしたら、維持費や取り回しなど、125クラスに目を向けるのも自然なことだと思える。それでも300ならではの走りのパフォーマンスには個人的に惹かれるものがあるので、以下にインプレッションも掲載しておくことにする。

■国内には設定のない300ccクラスとなるSH300i -Scoopy-だが、搭載されるパワーユニットはPGM−FI化された4バルブ279.1ccとなる。高性能さとクリーンさを両立するこのSH用をベー スとしたフォルツァ用250ccユニットが国内で好評価を得ていることから、このエンジンそのものの出来の良さを容易に想像できるだろう。
インプレッションを行うにあたってタイヤとリヤショックがノンオリジナルであること、社外製大型スクリーンが装着された状態であることをまずはご承知おきいただきたい。
さて、いよいよ走りだしてみることにする。やはりパワー感たっぷりの押し出され方が最大の魅力であり、動的な軽さによるストレスフリーな走りを堪能できる点は間違いなく300ccクラスならではのメリットだろう。
ま たハイホイールモデルらしく、路面からの入力にはまったくといって良いほどナーバスになる必要がない。それよりもハンドルまわりの重さがハンドリングに影 響するかが気になるところ(スクリーンなどの重量物が上方向に集中しているので)だが、バンキングスピード自体気になることもなく、安定感の高さはハイホ イールであることを強く印象づけるものだった。
とは言え曲げ出しにキッカケを必要とはするけれど、それはドッコイショという類ではなく、スポーツ ライディングでワインディングを攻めているときのように曲がりたい方向のグリップを掌で気持ち押してやる程度の感覚。それだけでスムーズに車体が旋回を始 めるのと、その寝ていく感覚を把握しやすいところは好感触。総じてニュートラルなハンドリングを味わえ、この上なく走ることを楽しめる印象のスクーターだ と感じられた。街乗りレベルのスピードレンジでは、多少攻めたくらいではフレームのヨレなど皆無だったことも付け加えておく。
この車両に限った話 として難点を挙げるとしたら、個人的に好みではない足まわりということになる。低速域でよく動く足であるのに対し、中速以上ではゴツゴツとした印象に変わ るのだ。これはビチューボ製リヤショックのセッティングだが、単純な好みに加え、オーナーの常用速度域がインプレッションスピードとは異なるということで 理解した。
それでも終始安定方向かつ自然で乗りやすい特性を示すハンドリングは、素直でニュートラルな感触のため正直なところ驚いた。
よくできたシートもお尻の痛みとは無縁そうで、じつに快適な座り心地。
スクリーンも街乗りレベルで十分に効果が体感できるので、なかなかの好印象であった。
300ccクラスということで車検を必要とするクラスとなるが、ミッドレンジらしいパワーをいつでも右手の操作一つで引き出せるというのはとても魅力的。じっさいにかなり軽快であることもライディングを楽しくさせてくれるだろう。

なお本文中でも触れているが、2013年1月現在で足まわりをセッティング変更済みとのこと。リヤの純正サスは未体験だが、フロント側に10番のクッション オイルを使用したことで沈み込みを制御する方向の味付けに変化していると思われる。ここで掲載のインプレッションは、この新しいセッティングとする以前の ものなのでそこもご承知おきいただきたい。
もしもBuonoでやるとしたらリヤはサグ調整を行い、フロントのクッションオイルをおそらくスタンダードと思われる5番のまま油面だけ5mm上げたセッティングで試してみたい。
クッ ションオイルの番手を上げることでショックの動きを制御し車体を安定させる効果が得られるが、それよりも油面を上げることでプログレッシブ効果と似た(ボ トム付近でスプリングレートを高めたような)特性を得られるので、本来SH300iのもつ安定性にコシが加わるような感覚になると想像できるからだ。