Honda製ハイホイールという題材から

300ccユニットの素性を探る

 

Long Interview

高性能ハイホイールSH300i

 

トラブルシューティング編

Buono編集部:写真・文
photo & text by Buono editing unit

 

 

スタイリッシュで走りも良く、欧州でのヒットモデルへと成長したSH300i。この人気絶頂のハイホイール車には100ps/L といったハイパワーユニットが搭載され、その走りも気になるところ。そこで数少ない国内でのオーナーさんにお願いし、購入の経緯から維持に関することまで 包み隠さずお聞きしたロングインタビューが実現。Buonoによるインプレッションまで含め、SHシリーズのフラッグシップを徹底紹介!

■購入以来どんなトラブルがありましたか?

丼◎トラブルはまったくなしです。
若干ですけど特性みたいなのがあって、どうもなんか今までのホンダの海外向けスクーターのクセなのか特性なのか、ずっと継承してきちゃってるみたいなんですよ。
12Vバッテリーで電圧が13.4V以上あればOKですとマニュアルにはあるはずなんですけど、それをちょっとでも下回るとテスター計測で12V以上あって正常だとしてもエンジンが止まってしまうんです。
それも走っている最中に。
なのでその対策としてセルだけでエンジンがかかるようにしてあるんですよ。
走行中にエンジンがストールしてスコーンって止まってしまうと、ブレーキを握らないとかからないのでは話にならない。
だからその場ですぐにリスタートできるよう、前のパンテオンでも同じ特性を持っていたので「ここだけはこうしてくれ」と配線をバイパスさせてもらいました。
スクーターなんだけどエンストするときもあって、それが唐突にやってくるんですけど、どうも見てるとバッテリーの電圧がコンマ何Vか下がるだけでその特性が出てくるみたいなんですよ……それぐらいですかね。

■そのための対策方法はなにかあるんですか?

丼◎ちょっと前にもかかりが悪くなってきて「止まるな」となったときに、計ってみても電圧は正常なんですよね。
それでも「もう2年経ったからとりあえず変えておくか」変えてみると、その症状が一切消えてしまうんです。
これがもっと酷くなってくると、いくらセルを回してもエンジンがかからなくなるんですよ。
セルが回るのにエンジンはかからない、なのにバッテリーを変えるとエンジンは一発でかかる。
それ状態でバッテリーはどれくらい使ってるかというと3年くらい。
その症状が最初はわからなかったんですが、おもしろいことにメーターパネルのなかの針の振れ具合に出るんですよ。
イグニッションをONにすると全部の針が1回ブィーンと動くのですよね。
そのとき燃料系も上がるんですけど、そこのところでバッテリーが弱っているときは1回下がってもう1回上がるんですよ。
これがバッテリー正常時だと、ONにしてから上がったままで下がらないんです。
これが目安みたいで、ほかのホンダのヨーロッパ向けスクーターでも電気が足りないときは電動式のメーターであれば見られます。

■国内ものではない症状ですか?

丼◎問い合わせてみたんですが、フォルツァに限っては国内でそういう症状はないからわからないということでした。

■では輸入ものもホンダ製スクーターに限ってその症状があると?

丼◎そうみたいなんですが、マニュアルには載っていない。
けっこう載ってないことっていうのがあるんですよね。
あとヨーロッパのほうのオーナーたちの話題では、ギアボックスオイルが抜けちゃうという不具合が出てるようなんですけど自分のにはそういった症状が出ていません。
ギアボックスオイルは1回入れ替えてますけど、オイルも滲んだりしていないですね。

■これまでに日常的な整備項目としてどんなことをやっていますか?

丼◎ギアオイル、エンジンオイル、タイヤが3回、パッドの交換、あとは前後サス、ベルト、ウェイトローラー、クラッチ、エアフィルター、プラグ、クーラントLLC……まあ軒並みですね。
普通に距離を乗ることで消耗や劣化するような箇所はすべてやっていて、エンジンストール以外のトラブルらしいトラブルは皆無です。
だいたい半年から1年で、年に1回か2回は定期点検してますし、その都度インジェクターの洗浄からなにからやってます。
ブレーキだってバラして組み上げてます。
メーカーでは4000kmごとのオイル交換を推奨しているんですけど、もたないのでだいたい3000km目安で交換します。
それと季節によって硬さを変えているので、それによってもオイルを入れ替えています。
それからある程度の距離を走ると、見た目で減っていなくてもウェイトローラーやベルトなどは見切りで交換してしまいますよ。
なにかあったとき、取り寄せるためのスパンが1週間くらいは必要となってしまうんです。
その間乗れなくなるのは困るので、ある程度のものは一式ストックしてあります。
オイルもパッドもフィルターもベルトもウェイトローラーも。
あと他車種の分まで加えると、ケーブル類なんかもスピードメーター用からなにから全部ありますね。

■部品調達はご自身でやっているということですよね?

丼◎自分でやるのと、それからお店に任せるのと半々くらいですかね。
お店のほうにメーカーから入ってこないものは、オプションとサービスマニュアルとパーツリストなんですよ。
でもこの3つがないとお店のほうとしては売れないので、必要があればそこはこちらから入れておくんですよね。
その3つだけはメーカーがかたくなに出さないですから。
※ちなみに現在は欧州から直に取り寄せているといい、納期はおおよそ3週間以内で手元に届くそうだ。

■じっさいに壊れる車両ですか?

丼◎エンジンがかからないとか、走行ができなくなるような不安とかは一度もないですね。
HIDのバルブがつかなくなったことはあるんですけど、夜でなければ走って帰ってこれるので、ほかにはとくにそういったこともなく信頼性は高いと思います。
エンジンに関しては特性を理解して油脂類をマメに交換してやればいいのと、ベルトは2万kmが交換目安とマニュアルにはあるんですが、1万kmくらいで削れカスがスゴイのでプーリー内部とハウジングの洗浄ついでに替えてしまうのがいいと思います。
エアツールも必要で環境が整っていないと難しい部分でもありますが、そういったことなどを理解してメンテしてやれば大丈夫ですよ。
ノーメンテで乗ったことはないですね。
そうそう、ウォーターポンプの下あたりにオイルのメカニカルシールがあるんですけど、そこにある穴からオイルが漏れるようになっているんですよ。
だからうっかりしていると200ccくらい減っていることもあります。
これはレベルいっぱいまでオイルを入れて、そこから減っていくペースを把握するしか対処法がないんですよ。

■ なるほど、気にしなきゃいけないということは手をかけることになるのでいいかも知れませんね。普通に日本人の感覚ではなんで漏れるの? と怒ったりしそう ですけど…。話は変わりますが、世間的にも評価の高いGIVI製スクリーンには個人的に興味があったんですよね。それがいざ乗ってみて、思っていたより効 果が体感できたのは収穫でした。走りながら手を出してみたり、いろんなことを試してみて肩口とか頭頂部にちゃんと風を流し当てているので、街乗りのスピー ドレンジではなかなか効果のあるスクリーンだと感じられました。その分最高速付近でどうなのかなって思うところもあるけれど、常用域と言える程度のスピー ドレンジ内(高速走行を含む)だったら十分実用的な気がしましたね。ちなみに装着したことで燃費が落ちちゃったとかありますか?

丼◎意外といいんですよ。
リッターあたり23〜24kmは走りますし、整流効果が高いせいかあまり悪くなった印象はないです。
なにより身体もラクなので、とてもよかったなと思ってます。

■走りだしてみて寝かしづらいということはまるでなく、意外とニュートラルなハンドリングという印象を持ちました。ただし安定性の高い16インチは曲げだしにきっかけを必要とするあたり、当初はハイホイールの特性として怠いと感じたりしたんですか?

丼◎ハンドルが重いとか曲がりづらいとかいう感覚はなかったですね。
たぶんスカラベオのほうが立ちは強いと思うんですよ。
SHの現状のほうがハンドルまわりにいろいろ付いているので重さはあると思うんですが、操作感としての重さはほとんど感じないです。