Honda製ハイホイールという題材から

300ccユニットの素性を探る

 

Long Interview

高性能ハイホイールSH300i

 

維持&整備編

Buono編集部:写真・文
photo & text by Buono editing unit

 

スタイリッシュで走りも良く、欧州でのヒットモデルへと成長したSH300i。この人気絶頂のハイホイール車には100ps/L といったハイパワーユニットが搭載され、その走りも気になるところ。そこで数少ない国内でのオーナーさんにお願いし、購入の経緯から維持に関することまで 包み隠さずお聞きしたロングインタビューが実現。Buonoによるインプレッションまで含め、SHシリーズのフラッグシップを徹底紹介!

 

 

■SH300に乗られて感じるネガティブポイントはありますか?

丼◎まず高速安定性がけっこう悪いんですよ。
100km/hを超えるくらいの速度域になってくると……日本ではそこまでですが、ヨーロッパだとそれ以上出せるところもあるのでそこは気になるところだと思います。
100km/hを超えるくらいでヨーイングが始まってくるんです。
車体がグングングングン揺れるんですよ。
当初エンジンハンガーらしいハンガーがなくてフレームに直接エンジンがマウントされていると思っていましたが、バラしてみて確認できたのはエンジンが「2つ」のハンガーに懸架されているということでした。
ハンガーとエンジンをつなぐシャフトがベアリングを介してマウントされているので、それまでのスクーターとはちょっと違った構造になっていたんです。
もちろんダンパーブッシュも採用されてはいますが、全体的にみてこれらの構造がフレームに勝ってしまっているんじゃないかと……。
それでエンジンのパワーに車体が負けちゃってるんだと思います。
でも2011モデルではフレームに補強が入りタイヤもラジアル化されていて、ネガを打ち消す方向に進化しているんですよね。

■ではその後のモデルでは高速での安定性を増しているだろうということが想像できるわけですね?

もともとカバー部がシルバーの可倒ステップだが、ボディカラーに合わせて過去に設定のあったスポーティグレードのものを部品で入手して装着
もともとカバー部がシルバーの可倒ステップだが、ボディカラーに合わせて過去に設定のあったスポーティグレードのものを部品で入手して装着

丼◎それについてはメーカーのほうがアナウンスしています。
高速安定性を向上させるためにフレームを補強して、タイヤも変え、サスペンションのセッティングも見直してますね。
それに対してエンジンの出力特性も変わっているんですよ。
最大パワーは同じ20kWなんですが、トルクが1kgf-mくらい上がってます。
それで困ったことにデザインがこれまでより少し尖ったん

トップボックス付きも設定されていて、この車両はまさにそのトップボックス付き。リヤキャリヤ上部に直接装着するタイプでベースを必要としない
トップボックス付きも設定されていて、この車両はまさにそのトップボックス付き。リヤキャリヤ上部に直接装着するタイプでベースを必要としない

ですよ。
なのでぐらぐらするところもあるんですけど、さすがに今乗り換えるにはちょっと辛いなと。
あとネガティブな点というと、一般的に日本車で当然だと思ってた装備がまず付いてないというところ。
さっきの話と若干相反する部分もあるんですけど、ハザードのスイッチは欲しかったなと。
パーキングブレーキに関しては慣れてしまえば問題はないのでいいのですが、そういっ

トップボックス内部に貼られるコーションステッカーには最大積載3kgと表示。後付けしようと考えていたことから、使い勝手の良さに満足とのこと
トップボックス内部に貼られるコーションステッカーには最大積載3kgと表示。後付けしようと考えていたことから、使い勝手の良さに満足とのこと

たものが付いてないワリにシガーソケットが付いていたりするんですよ。
確かに日本で研究開発や設計をしてイタリアで生産しているから、それぞれの意向が入っているのはわかるんですけど、ちょっと中途半端なところがけっこうあるように感じます。
そういったところも含めてパッケージとして受け入れられればそれなりに楽しめるし、他の人にはわからない良さというのもあるので飲み込んでしまってがまんしようと。

メインキーにより開ける&外すの操作を可能としているところは便利だが、キーにテンションがかかって折れてしまったことがあるそうだ
メインキーにより開ける&外すの操作を可能としているところは便利だが、キーにテンションがかかって折れてしまったことがあるそうだ

■ところで、先ほど試乗させていただいてもう少しだけダンピング特性を変えたいと感じました。微々たるものなのですが、入りが早いのでもうちょっとだけ 粘ってくれればテールの滑り出しも抑えられそうな気がするし、いろんな意味で良くなるような気がするんですよ。そこだけが気になりましたね。

丼◎じつはフロントのサスペンションを1万km超えの時点でオーバーホールしてあり、

オプション設定されていた、トップケース専用のインナーバッグ。持ち手も付いているので、ツーリング先などでそのまま持ち出せるところはとても便利
オプション設定されていた、トップケース専用のインナーバッグ。持ち手も付いているので、ツーリング先などでそのまま持ち出せるところはとても便利

オイル特性も変えてあるのでスタンダードな状態ではないんです。
その辺は乗り手の好みの違いだと思ってもらえたらと思います。
後ろにタンデムをするパターンを考えて、あと普段からどちらかというと前が柔らかくて後ろが硬いんですよ。
だからあの状態で自分と同じ体格くらいのパッセンジャーを乗せてタンデムしても、リヤは奇麗に滑っていくんです。
滑り出しさえわかればあとは

パッセンジャーのグラブバーを兼ねるリヤキャリヤもタンデムステップ同様に、スポーティグレードからの流用で車体食との色味を合わせている
パッセンジャーのグラブバーを兼ねるリヤキャリヤもタンデムステップ同様に、スポーティグレードからの流用で車体食との色味を合わせている

コントロールができますから。
そのためにも後ろは硬めで前が若干柔らかめというのが好みのセッティングなんですよ。
ほかの車両に乗るときも、それがチェーン駆動のバイクであっても同様の方向にセッティングしますね。
※なお2013年1月現在、リヤを純正サスペンションに戻しているとのこと。また、これに併せてフロントサスペンションも2回目のオーバーホールを実施。その際クッションオイルを10番としているそうだ。

■購入後のSHでのスクーターライフですが、じっさい普段はどのように使われていますか?

テールランプ/ストップ用バルブのほか、ウインカーも4ヶ所すべてLED球化されている。ウインカー球はピン形状が特殊だったため特注でオーダー
テールランプ/ストップ用バルブのほか、ウインカーも4ヶ所すべてLED球化されている。ウインカー球はピン形状が特殊だったため特注でオーダー

丼◎大げさではなく年間通して360日くらいバイクに乗っているので、ほとんど毎日SHに乗っていることになりますね。
1日に複数代を乗り換えることもあるんですけど、まあ朝早いのと道中に手間をかけたくないという無精さがあったりしますし、それとものも入るということで仕事に行くときはほとんどSHで出かけることが多いです。
仕事が終わった帰りの食料買い出しなどはスクーターが便利だし、悪天候にも強いので

マフラーはスタンダードのまま。シルバーウイング的なデザインを採用し、比較的マイルドな音質を保ちつつ音量もグッと抑えられている
マフラーはスタンダードのまま。シルバーウイング的なデザインを採用し、比較的マイルドな音質を保ちつつ音量もグッと抑えられている

なんだかんだいって乗ってる確率が高いですね。
ただどこか遠くに行くときは違うものに乗っていくので、1ヶ月の走行距離がSH単体ではそんなに多くない。
それでも1000km単位で乗りますし、そのほとんど街乗りであり、仕事を含めた日常の足ですよ。

■チューニングやカスタムはどうですか?

丼◎まあ

スクーター用としてはメーカーも種類もあまり選択肢がないなかで、ツインショックタイプのビチューボ製SCOOT DUALをチョイス
スクーター用としてはメーカーも種類もあまり選択肢がないなかで、ツインショックタイプのビチューボ製SCOOT DUALをチョイス

バイクとかスクーターというのを道具として扱ってるし、そう見ているので、だからあんまりボクが見てどうかなと思うカスタムはしないんですよ。
それは電飾入れたり、マフラー変えたりとかってことなんですけど。
変えてもスリップオンだったりとかですね。
SH用にも1度ジャネリのやつを入れたんですけど、30分で元に戻してしまいました。
それはもう一人のSHオーナーさんに譲りましたけど。
あまりにも回転が上がりすぎて喧しいのが気になったので。
だから日常に使えて耐えられて、そのなかでいいものに変えて使ってみるという方向性だったりするんですよ。
ヨーロッパ車だからヨーロッパのメーカーやブランドにこだわってみるというようなこともなくて、オイルもブレーキもタイヤもみんな日本製です。
現地モデルにメイドインジャパンのパーツを組み込んでいって使ったらおもしろいかな、そのほうがその後のメンテナンスも容易にできるだ

リヤにもフロント同様、グリメカ製キャストホイールを履く。余談だが、若干ながらフロントホイールはエア抜けの目立つものが多いとされる
リヤにもフロント同様、グリメカ製キャストホイールを履く。余談だが、若干ながらフロントホイールはエア抜けの目立つものが多いとされる

ろうなということですよね。
そのほかどうしても手に入らないものだけを現地のブランドで組み付けたりとかはします。

■フロントサスはオイルを変えているということでしたけど、リヤのビチューボは希望に合わせて硬めてるんですか? それとも買ったそのままの状態であの硬さなんですか?

丼◎調整してます。
丸1日かけてちょっとずつ……ミリ単位で合わせていって、現状のセッティングを見つけています。

■いわゆるサグ調整ではなく、あくまで乗り味で好みの硬さを選んで決めたということですね?

丼◎そうですね。
最初にショップに持ち込んで取付をした状態で取扱説明書によると1G設定だったんですよ。
でもその設定だとちょっと上側に隙間(スプリング上部とイニシャル調整ナットとのクリアランス)が空くので、バネレートが柔らかすぎるんですよね。
なので硬めに調整していって、ちょっと高め(ヒップアップ気味)にしているんです。
後ろにものを積むことと人を乗せることが多く、それに硬めがちょっと好きということもあるのでそういった方向性なんですけど、1日に何回も試乗して戻ってセッティング……というのを繰り返して、その都度ノギスで計ってデータ化するということをやっていました。
現状は上端からスプリングのイニシャル調整ナットまでのクリアランスを20数ミリ締込んだセッティングです。
ビチューボのサスペンションってダブルナットではないので、イタズラなどでバラバラにセッティングを狂わされちゃうと乗り味も変わっちゃうし、走安性も変わってしまう。
だから日ごろから定期的な計測をするためと、イタズラなどの万が一のためにノギスがどうしても必要で常備してます。
無段階調整が可能なのはいいんですが、ダブルナットじゃないのでグルグルグルグル回っちゃうところはどうかと思いますよね。